不当な配置転換への対応方法


1 配転命令なのか,単なる打診にすぎないのか,を確認する。

単なる打診に過ぎない場合は,承諾するか否かは自由ですので,拒否すれば足ります。

2 家庭の事情等,配転に応じられない事情を会社に説明する。

このような労働者側の事情に会社が真摯に対応したか否かが,権利濫用判断の一事情になると考えられます。

3 配転命令が出された場合は,有効要件(根拠,法令違反,権利濫用の有無)を確認する。

配転命令が有効であるためには、次の3つの要件を満たす必要がありますので,その点の確認をする必要があります。ただ,ご自身での判断は難しいと思われますので,労働法を専門とする弁護士へ相談することをお勧めします。

① 労働契約上、配転命令権の根拠があり、その範囲内で配転命令が出されること。

配転について個別の合意があればそれが根拠となりますが、それがない場合は、就業規則や労働協約(使用者と労働組合などとの間で書面によって定められたルールのこと。就業規則や労働契約よりも強い効力をもちます)が根拠となります。配転命令権の範囲は、労働契約などに明文の規定があればそれによりますが、そうでない場合は、就業規則や労働協約の規定、労働契約締結時の状況などから合理的に判断されます。とくに、職種・勤務地限定契約が結ばれた場合は、その限定された職種・勤務地の範囲が、配転命令権の範囲になります。職種限定を認めた裁判例には、職種を限定する合意が認められれば、原則として、異職種への配転には労働者の承諾が必要となるとしたもの(アール・エフ・ラジオ日本事件・東京高判昭58.5.25労判411-36)、語学を必要とする社長秘書業務を含む事務系業務の社員から警備業務への職種変更の配転命令が無効とされたもの(ヤマトセキュリティー事件・大阪地決平9.6.10労判720-55)、病院の事務職員からナースヘルパーへの配転命令につき、系統を異にする職種への配転命令は、「業務上の特段の必要性及び当該従業員を異動させるべき特段の合理性があり、かつ、これらの点についての十分な説明がなされた場合か、あるいは本人が同意した場合を除き」無効であるとしたもの(直源会相模原南病院事件・東京高判平11.6.11労判761-118)などがあります。
それに対し、職種限定を認めなかった裁判例には、「特殊技能者であっても、長期雇用を前提としての採用の場合には、当分の間は職種がそれに限定されているが、相当な期間経過後、一定年齢に達した時点以降は他の職種に配転されるとの合意が成立していたと解される」としたもの(九州朝日放送事件・最判平10.9.10労判757-20)、自動車メーカーで10数年ないし20数年間車軸製造に従事してきた機械工を、所属工場の生産体制の再編成に伴い、全員組立てラインへ配置する配転命令を有効としたもの(日産自動車事件・最判平元.12.7労判554-6等)などがあります。

② 法令違反等がないこと。

配転命令は、組合活動の妨害を目的とするような不当労働行為(労組法7条)に当たる場合や、思想信条による差別(労基法3条)に当たる場合などには、無効になります。また、労働協約や就業規則の条項に違反してなされた配転命令も、一般に、無効になります。

③ 権利濫用でないこと。

配転命令が配転命令権の範囲内であっても、権利濫用に当たる場合は、無効になります。判例(東亜ペイント事件・最判昭61.7.14労判477-6)によれば、権利濫用か否かについては、次のⅰ~ⅴまでの要素を総合的に勘案して判断すべきこととされています。

  • ⅰ 当該人員配置の変更を行う業務上の必要性の有無
  • ⅱ 人員選択の合理性
  • ⅲ 配転命令が不当な動機・目的(嫌がらせによる退職強要など)でなされているか否か
  • ⅳ 当該配転が労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものか否か
  • ⅴ その他上記に準じる特段の事情の有無(配転をめぐる経緯、配転の手続など)

4 配転命令が無効であると考えられる場合は,配転命令の撤回,仮処分,労働審判等の法的措置を検討する。

⑴ 配転命令を出さないことや撤回を求めます。
⑵ 会社が応ずることなく配転命令を強行した場合は,法的措置を検討します。

従前の職種又は勤務場所における地位確認の本案訴訟,それらの地位を仮に定めるという内容の仮処分申立,労働審判の申立及び労働審判法29条(民事調停法12条)による審判前の措置を求める(例えば「労働審判が係属している間は,配転命令の効力を停止するように相手方に命ずることを求める。」「労働審判手続が係属している間は,配転命令違反を理由として申立人を解雇してはならないことを相手方に命ずることを求める。」など)という方法も検討に値します(措置に従わない場合は,労働審判法32条の過料の制裁がありあます。)。

5 異議を留めて配転に応じつつ,配転命令の効力を争う

同時に,一定期日までに配転先に赴任しないと解雇等の何らかの不利益処分が行われる可能性がある場合(この様な場合は多いと考えられる。)は,解雇等を回避するために,配転命令に異議を留めて(内容証明郵便等で確実に文書で行うべき)配転先に赴任した上で配転命令の効力を争うことを検討します。
配転命令を争うにしても,その判断は微妙なケースが多く,配転を拒否した場合,業務命令違反を理由とした懲戒解雇などを誘発するリスクがあります。
確かに,配転命令が無効と判断されれば,これが有効であることを前提になされた業務命令違反に基づく解雇も無効と判断されます。しかし,逆に言えば,配転命令の効力が有効と判断された場合は,配転命令を拒否して赴任しなかった場合の業務命令違反を根拠とした解雇も有効となり,雇用関係そのものまで失うという最悪の結論となります。
前記のとおり反転命令の効力の判断が複雑微妙であり,弁護士でも結論を読むのは難しいといえますので,上記雇用関係まで失う最悪リスクは回避しつつ,配転命令の効力を争うのが現実的であることが多いといえます。

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