エッソ石油事件


エッソ石油事件

山口地裁決定 1989年8月31日

労働判例551号69頁/労経速報1368号12頁

〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令の根拠〕
〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の濫用〕
 二 本件配転命令の効力
 前記一の事実によると、本件配転命令により、債権者が静岡に転勤するとなると、債権者には高等学校一年生の長男を始め就学中の子が三名おり、それらの者が転校しなければならない可能性もあること、債権者はその肩書地に土地付きの住宅を購入しており、その購入の際の借入金の返済が終了しておらず、その処分もままならないこと及び債務者と自主労組が協議中である境港油槽所の閉鎖問題について、債権者が自主労組側の中心となって活動しているところ、その交渉が支障を来す虞れもあること等債権者あるいは債権者が所属する自主労組に不利益が全くないとはいえない(但し、本件配転命令に関して、債務者に不当労働行為があったと一応認めるに足りる疎明資料はない。)。
 しかしながら、債権者が購入した住宅についての借入金の返済については、前記一6のとおり、債務者の援助は継続されるし、境港の油槽所の閉鎖問題の交渉についても、今までの交渉経緯はあるとしても、債権者でなければ協議ができないということまでも一応認めるに足りる疎明はない。
 また、債権者は、妻Aの腰痛症をも本件配転命令に伴う支障として主張するが、疎明資料によれば、右Aの通院は、昭和六〇年、同六一年の一時期に過ぎず、仮に、右Aに腰痛症が認められるとしても、本件配転命令の効力を左右する事情足り得ないものといわざるを得ない。
 一方、前記一の5(一)のとおり、ビジネス・カウンセラーの職務上、販売代理店との関係から、数年間の経過により配置転換をすることには合理性があり、債務者が現在の三田尻油槽所駐在員として勤務して一三年近くが経過し、前記例外を除けば、他のビジネス・カウンセラーと比べても現在の任地における勤務がきわめて長期となっていること、及び一方で配転先の横浜支店静岡営業所にも配転を予定している従業員が存在することからすると、本件配転命令は債務者の業務上必要性があると認められ、また、その配転先の決定についても、債権者の労働運動の活動に支障がないように考慮されている面もあり、さらに、前記一の3(三)のとおり、本件配転命令の手続には違法はなく、右交渉の経過の中で債権者が譲歩して希望した広島支店または同支店岡山営業所の勤務も債務者の従業員の適性配置という点からして困難である事情が存在すると考えられる。
 右によると、本件配転命令には債務者の業務上の必要性が認められるとともに、配転命令を規定した就業規則の存在をも考慮すると、右配転命令により債権者にも不利益がないとはいえないが、右債務者の業務上の必要性と比較衡量すると、本件配転命令が権利の濫用であるとは認めることはできない。

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