西日本旅客鉄道事件


西日本旅客鉄道事件

岡山地裁判決  1991年7月10日

労働民例集42巻4号557頁/タイムズ789号166頁/労働判例618号77頁

〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令の根拠〕
 被告は、本件命令が従業員の配置転換命令ではなく、現場長による職務内容の指定替えにすぎない旨主張するところ、成立に争いのない乙第一、第二号証、証人徳田伸一の証言によれば、本件命令は、本件就業規則第四八条、本件支社管理規程別表第4(現場長の専決事項とされる部下社員の勤務割りの指定)に基づいて発令されているものの、本件命令によって原告の職務内容及び勤務場所が、倉敷駅構内における物品販売から倉敷駅外にある本件踏切の踏切看守に変更されており、右変更の前後でその職務内容及び勤務場所について実質的な差異があるうえ、右変更がある程度長期間にわたるものであると考えられることからすると、本件命令は配置転換命令に該当するというべきである。
〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の限界〕
 本件命令が人事・業務上の権限の濫用であるかにつき判断するに、前記認定事実によれば、昭和六二年九月初め頃までには本件踏切の看守に二名の欠員の生じることが被告に判明しており、本件命令は、右欠員を補充する業務上の必要に基づいて実施されたものであり、対象者を選定するに当っても、予め上司の助役が三名の候補者を選定したうえ、原告の性格、A店における仕事振り、過去に運転適性検査に合格していたことから再度右検査に合格することは確実であること、事業所制発足に伴い、原告の職務内容を変える必要があったことなどを考慮して原告を踏切看守として発令する旨を被告内部で決定しているのであり、しかも、右内部決定は、同月一〇日過ぎ頃までに行われていることから、本件作文の提出をめぐる同月一六日の駅長室隣室における原告とのやりとり以前のものであると認められるので、原告を踏切看守として選定する過程や人選に不合理な点は見受けられず、被告に報復等の不当な動機、目的があったとも解されない。
 してみると本件命令が人事権、業務命令権の裁量を逸脱したものであるとはいえないから、本件命令が無効であるとの原告の主張は理由がない。
〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 前記認定事実によれば、被告は、民営化後間もなくの時期に、従業員の経営参画意欲の高揚を図ることを目的として社員意見発表会を企画し、このため予め題材を定めて全従業員を対象に作文を募集したところ、原告は右題材とはかけ離れた右発表会や作文募集に対する不満や非難を記載した本件作文を提出し、これが、昭和六二年九月一六日の駅長室隣室における原告とのやりとりの発端になっていることからすると、原告が上司に対して挑戦的ともいえる内容の本件作文を提出して上司の感情を害したうえ、右やりとりの際にも、原告自身は余り発言しなかったものの、かたくなな態度を取り続けたことが上司であるB駅長らの判示言動を誘発したというべきであり、その際におけるB駅長らの発言内容、同人らが原告の上司で原告を指導する立場にあったことをも総合的に考慮すれば、B駅長らの右言動は、社会的相当性を逸脱したものとはいえず、不法行為を構成するとは解されない。さらに、本件における作文の募集が、従業員の能力、適性の評価とは無縁に、もっぱら被告に対する忠誠心という内面的な心情を検証する目的で実施され、被告側が本件作文の提出を強要したとの原告の主張に添う事実を認めるに足りる証拠はない。

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